魔子物語7 永遠の休日

 

 

いよいよ最終話。

授業中、シャープペンを唇につけて魔子は考え事をしていた。

見慣れた教室に仲良くなったクラスメイト・・・ハッと授業中樹里と目があって

しまい微笑み返すが心は真っ暗に近かったのだ。

(もしかしたらもう・・・樹里たちとも会えなくなるのかな。・・・・・ねえ俊一君

、魔子どうしたらいいんだろう。お母さんも父さんもガッカリするだろうな。)

その準備に忙しいのか勝美は朝から欠席している。

集会の1時間前に魔子は学園内の教会へ足を運んだ。

というより1日1回必ずここへ来るのが彼女の日課なのだ。

クリスチャンとは名ばかりの、この教会へ毎日お参りに来るのは実は彼女しかいなかった。

勝美の父、勝五郎が世間で注目を浴びて金持ちの女生徒を取る為のいわば道具でしか

ないのが本当だった。

だが3年間かかさず神様を見舞ってきた彼女はそんな事どうでもいいのかも知れないが・・

目をつむり自問自答する彼女。

(神様。マリア様。私、怖い。・・・全てがなくなるかも知れないんです。もしかしたら

この教会も最後かも・・・)

思いを出すと魔子は立ち去ろうとした・・その瞬間、彼女の耳元に女性の声が・・

(怖がらなくても大丈夫です。聖なる少女よ、神は汝にあり)

「!!・・・・」

驚いて振り返ったが誰もいない。

(・・・・・・マリア様・・・)

しばらく立ち尽くし彼女は外に出ていよいよ審判の全校集会へとむかった。

理事、校長の話が終わり、ついに封印を解くように勝美は紺のダブルスーツで段上台に

上がるといつもの高圧的な態度で流暢な演説を開始する。

「皆様本日はお忙しい所を当学園の為にいらして頂きありがとうございます。

さて今日の本題に写らせて頂きます。3年B組、五十嵐魔子が4日前引き起こした処遇に

ついて・・・学園前にて一糸まとわぬ姿で登校した彼女の行為は当校のモラルと格式、品質そして支援

して下さる皆様に対して取り返しのつかない事態であると認識しております。

しかし五十嵐にも卒業させて上げたい、との理事からの暖かい要望により゛あるテスト゛

を実行します。

その結果、皆さんが゛許す゛というのであれば当校は彼女を受け入れます。」

(なに好き勝手な事いってんだよ)

 

勝美を末席で睨みながら樹里は心の中でつぶやいていた。

だが魔子は透き通ったような一点の曇りもない瞳でしゃべる彼女を冷静に見つめていた。

と、それは勝美の横に運ばれてきたのだった。

ザワッ・・と一瞬会場内がどよめく。

電気マッサージの長イス・・にコンピュータ制御装置なのだろうか。

オフコンがあり、そして妙な白い配線が・・・・5、60本はある不思議な機械になにやらメーター

までついているではないか!

「主任さんご説明をお願いします」

「皆さんこんにちは。私は富士川コンピュータの桶川、と申します。知っての通り当社は

電化製品シェア日本一の企業でございます、がこの製品・・・も売り物です、はい。

「エクスタシー察知チェアー」といいまして、対象者をまずイスに座ってもらいこの管を

体全てにつけ・・その・・反応を見る装置なのです。少子高齢化さけばれる現在、効率良くお子様を

・・・という大真面目な機械です。このメーターの針を越えればすごい発情状態なのです」

インテリメガネをかけ淡々と桶川は説明し、終える。

聞いてる方が恥ずかしくなる内容だが勝美は顔色一つ変えずについに魔子を呼ぶ。

「以上です。では五十嵐魔子さん来て下さい。これからテストをします。5分以内に3回

メーターオーバーだと異常だそうですよ。ただしこれは主任の説明通り・・ダイレクトに

パイプを肌につけますので・・五十嵐さん、全裸で来て下さい。」

(ちっ、またか!!コイツどこまで魔子をイビれば気が済むんだい)

ザワザワ・・・と会場は騒がしくなった。

経済連も生徒も魔子を見てヒソヒソ話を始める。

「魔子!こんなの行かなくていいよ!!」

「そうよそうよ!」

樹里たちは止めようとした。

(ふん!引っ込み思案のアンタが自分で来れるのかしら。ほんとはここで一発やりたかったけどね。あたしも

色々あるのさ。これで退学決定。さて終わるかねぇ)

が、次の瞬間勝美はビックリ目になり樹里もクラスメイトも勝五郎理事も例のスケベ

先生2人組も驚きをかくせなかった。

「・・・・これでよろしいですか?」

そう、彼女は自分からスルスルと服を脱ぎ全裸になったのだ。

そしてゆっくりとプロレスラーが花道を行くように勝美のいる上段へと上がっていった。

(・・・く、くくく。コイツほんとの馬鹿だよ。みなよ経済連の面をさ)

が、魔子は眼中にない。

 

自分から地獄一丁目のそのイスにスッと座ると桶川はキャラそのままに冷静沈着に

その管を魔子の二の腕、太もも、背筋、乳首、ケツ、背筋、腰、そして恥部など全部

つけ終える。

(ふん。逃げればいいのに。こんな大勢じゃあ・・・すぐトロトロだよ)

勝美はどこまでも頭の働く女だ。

魔子の表情はもう頬がほてり落ち着かない。

(50の冷たい管が全裸を刺激したはずさ。おやおや子猫ちゃん、もうトロンとした

目つきになってきてるねぇ。ふふふ)

女生徒は違った意味でザワついていた。

勝五郎理事は

(ええのう。・・・ええ乳しとるのう。生きててよかった・・・あの子、携帯番号教えてれんかのう)

と酔いしれ高松、苅田両先生は

(ああっ、すげえょぉ。デジカメありゃあなぁ。惜しいな。くそぅ、高く売れるのによぉ)

と悔しがったが自慢のイチモツは立っていた。

「では、始めさせて頂きます。」

カチッとタイムウォッチがまわり始める。

汗を出し、それでも魔子は以前とは違い色んな人たちの顔を見ていた。

(私は残りたい・・・勝ちたい。)

マリア様のせいか、そう思うようになっていた。

だか勝美にとってその垣根をくずすのは簡単だった。

勝美が写真集を出す。例の俊一似アイドルのヌードだ!

(!!あっ、あひっ☆)

ブ、ブーーー!!

なんとものの30秒も立たずにメーターオーバーだ。

(・・・・しゅ、俊一君・・・あ)

ブ、ブーーー!!

なに?この子・・・・・・・

ザワッと経済連たちは噂し合った。

(・・・こんな淫らな女生徒では。やはり退学しか・・)

(自分から脱いだというのも・・・その気があるのでは?)

もう後一回しかない。

魔子は油汗をかき始めた。

目もついにキョロキョロし始め耳も真っ赤。

(よし、勝ったね!あとは時間の問題だよ。そうよ、そうだよ五十嵐、お前は男の事ばかり

考えてる乳首ビンビンケツプリンプリン、股間ヌルヌルな淫らな露出狂女なんだよ!!)

 

魔子は魔子で必死だった。

だが若い、健康で発育の良い彼女のバディは正直だったと言える。

その、押し寄せる波を押さえる防波堤がもう彼女にはなかったのだ。

俊一君が好き・・・・・それは真実だったから・・・・

(・・・・・・あふぅっ!あんっ!!)

ブ、ブーーー!!

この音と共に全ては終わった。

「3回目・・・という事で残念です。学園としては残して上げたかったが・・・

どうでしょう、皆様・・・・・」

しかし経済連も女生徒も樹里も誰も上げずに結局は魔子は退学となる。

(勝った!ざまみな五十嵐!!せいぜい他では失敗しないといいね。ククク)

力つきた表情の魔子にわざとらしく勝美はスッと彼女にマイクを近づけた。

「では五十嵐さん、お別れです。最後に皆さんにお別れの挨拶を・・」

「・・・私には大好きな男の人がいます。その人の事を思うと体が熱くて熱くて・・・感じずには

いられなかった。

私には分かりません。好きな人を思い、感じてしまったり性行為に走ったりするのがそんなに悪い事なので

しょうか?

私は結局退学なのでしょう。でも後悔はしていませんし、きっとこれからも大好きな人を愛しつづけて

いく事でしょう・・・さよなら。」

(なにいってやがる)

と勝美は思ったが顔には出さずに全校集会は終わり、約束通り魔子は退学になった。

樹里たちクラスメイトは最後まで魔子を退学にしないで、と経済連に直訴したがダメだった。

「魔子・・・あたしたちって非力だよね。社会って、世間ていったいなんなんだろう。なんで

正しい奴が報われないで悪どい奴が成功するのか。悔しいよ、魔子。うっく」

「樹里・・・・・」

集会所で樹里たちはいつまでも泣き続け、ついに魔子は永年親しんだ鏡十字学園を後にした。

唇をかみ締め、魔子は思う。

(マリア様は・・神は私にあるといってた。それがなんなのか分からないけど・・・樹里、私は負けない。

正しい人が正しいと言える世界があると信じているよ・・・ずっと、ずっとネ・・・1人きりは寂しいけど・・・・

頑張るよ!!)

その時、後ろから一つの影が・・・

(!・・・・俊一・・・君!?)

ヘコんだカバンに少し長い髪の男の子・・・そう、それはまぎれもなくあの俊一だ。

やがて魔子の足が止まると俊一は彼女を思い切り抱きしめた。

季節はもう夏。

全てを失ったはずの美少女、魔子は変わりゆく季節の中で真実の愛を手に入れた。










 

おしまい。
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