PINKFOX 強制収容18

静まり返る広い部屋。
動揺して携帯を落としたままショックのあまり動かなくなった美智子。
直視する女医。
美智子をジー・・と見つめエリート女医はリモコンのスイッチを押すとそこには懐かしい猫宮ヤスシの
現在の姿が・・・
ヤスシは美智子が捕まった時も来てくれた。
だが彼女はもう終わりだと思っていた。
その彼が、彼が゛素゛のままの優しい笑顔で巨大なブラウン管越しにこちらを見つめていた。
美智子をチラッと見、女医は言う。
「・・・この画面に映っているのはあなたの彼・・なのかしらね・・・・・だとしたらあなたは・・・凄く幸せ者じゃない
かしら。だって私にこの話を持ちかけて来たのは・・・・そう・・彼本人なんだもの・・」
「!!・・・・・・」
「あなたに似て無鉄砲で世間知らずで・・・私だから良かったけどハチの巣司令官とかなら殺されてる・・それでもね、彼は・・あなたの・・・あなたの・・・・言うね・・・」
こわばる美智子。
もうどうしていいか分からず画面も見れずに多量の汗が吹き出て床にこぼれ落ちる。
「彼は・・あなたの・・馬渕美智子ちゃんとの・・赤ちゃんが欲しいんだって・・・・」
照れくさそうになんとか言いきるエリート女医。
「あ・・・・・・・・・・うぅ・・・・」
驚きと感激のあまりついに泣き出しその場にしゃがみこんでしまう美智子。
「ピ・・いえ美智子・・・冷静に今から言う事を聞いて。ここに移っている私たちの姿を実は今、ヤスシさんは
観ているの。ううん、勿論近くには残念ながらいない。でも私たちからも彼が見える。そしてあなたも彼が
見えます。・・・・私は・・あなたが・・・コホンッ(照)!じょ、情事を無事済ませるまで部屋の外で待っているから
・・・ね?分かる・・・よね」
しゃがみこんだ美智子に同じようにしゃがみ慰めるように耳元でささやく女医。
本当は時間もない。
新司令官のコノエがいつここへ来るかも分からない。
来れば旧体制の異物としてこのエリート女医も間違いなく殺される。
だがそれよりも実験とかではなく1人の女性として女医は美智子を最後に助けようと思ったに違いない。
だが当事者の彼女はいつものあの冷静さはなくただ泣きじゃくる普通の女の子のよう・・・
不安げなその瞳に島へ来た当初の気丈なビンクフォックスの面影は全くなかった。
(・・・・・・そうか・・・これが本当のこの子なのね・・・・)
そうなのだ。
本当の馬渕美智子は非常におとなしく真面目で女の子らしい純粋な子で、それは20を越えた今でも
変わらない・・・
さすがに困った女医だか見かねた2人にブラウン管越しに声をかけたのはナントもう1人の当事者、猫宮
ヤスシだった。
「・・・・馬渕・・・俺が嫌いか?初めて会った小さな時から俺は・・お前しか見ていないよ。心配だった・・・
そんな島にいってもう会えないんじゃないかと。でも・・でももう一度会えて俺は初めて信じたよ。」
「神様をね・・・」
次第に泣き止んでいく美智子。
まるで2人は同じ時同じ時間に生まれた仲の良い双子のように同調していく。
ついに美智子は心の奥に仕えていた本心をゆっくりと・・しゃべりはじめる・・・
「・・で・・でもわ・・・わちゃし・・・ぅ・・・(泣)・・ヤ、ヤス・・シ君が思・・ているよう・・な子じゃ・・・ぅっぐ(泣)」
ヤスシは分かっていた。
沢山の男性と数知れなく体を交わらせてきた汚れすぎた自分にはその資格がないと彼女が思っている事を。
「そんな事関係ねぇよ・・・だってお、お前は俺の・・・俺の・・・・・たった一人の嫁さんなんだからっ(恥)!!」
「・・・・・・・・・・・・」
固まる2人。フフ・・とエリート女医は最後とはがりに美智子の両腕を掴んで体を激しく揺さぶり言う。
「・・もうっ!!あーなーたーはあんないい人振っちゃうわけぇ!?なんなら私がもらってもいいのよ(笑)!!
見て見なさいよっ、わ、私は直視できやしないんだからっ(恥)!!!頑張りなさい・・・お幸せにね・・・」
いうと立ち上がり女医はゆっくりと部屋を出ていった。
その、女医の体が美智子の前を横切った瞬間、彼女は思わずあ・・・・・・となった。
ブラウン管越しに見る久しぶりのヤスシは美智子と同じ裸だった・・・
しかしその顔は優しさに満ちていた。
真っ赤になる美智子。
だが彼女は小さな女の子が王子様に初恋をして一目惚れで動かなくなってしまうように固まってしまう。
美智子はやはりヤスシが大好きで大好きで大好きでしょうがなかった。
でも、それだけに本当に大事な人だから自分に正直になれなかったのだろう。
彼はやはり違うのだ。
ビジネスで割り切るS○X。
フィーリングでじゃれあうだけの気軽な何か。
そうじゃなくマジで愛してるがゆえに最後まで素直になれなかったのだろう・・・
だが、もうお互い裸なのだ。リードするヤスシ。
「・・・美智子。俺たちの・・・初めての夫婦の共同作業だよ。カーテンを・・・カーテンを閉めてくれないか・・」
「・・・・・・プッ・・」
何がカーテンだか・・思わず笑ってしまう美智子。
更に微笑むヤスシ。
場所は違う。
どこにいるかさえ分からない。
でもたった一つだけ答えがあるとすればこの一握りは人生最高の時間だという事だ。
ようやくベットに寝た二人。
部屋の外では女医が、更に外の騒がしいクーデターの叫び声や金属音を聞きながら必死に祈っていた。


                                                           19へ続く