PINKFOX 強制収容22

囚人施設をこえ、軍事施設へ入るとコノエは司令官室へ美智子を招き入れる。
「PINKFOX氏、もうそろそろ・・・」
「分かっています。真面目な方ですね、あなたは・・クスクス」
「なら・・」
コノエがパチンッ!!と指をならすと数人のメイドが現れたちまち美智子にドレスを着せてしまった。
「・・この方が」
美智子のドレスを見ながら
「美しい・・・」
つぶやくコノエ。
「早速ですが」
「分かっています」
美智子は即答した。
「体制が変わったのです。O氏がまた私にお会いしたいんでしょう」
「・・・さすが・・PINKFOX氏。私の最重要任務は実は黒奇島制圧ではなく無傷で・・・び、美貌のあなたを
O大臣に差し上げる事だったのです。」
「O大臣も・・・いい人選をされます。あなたなら・・すごく格好いいのに堅物で女性にはまず手をつけないです
もの・・・ごめんなさい」
「まいったな・・・よく見てらっしゃる。さすがです」
汗をかくコノエ。さっきの彼女とは違う。
窓を見るともう陽が落ち外は真っ暗だ。
事実上、リョウタたちと今生の別れをした美智子はもう一度だけ捨てた名前の魔性のスパイ、PINKFOXに
戻っていた。
ここで死んでも良かった。
だがリョウタたちの安否を確認した今彼女はここで死ぬわけにいかない。
その最後の確認の為にまた彼女は悪魔と血の契約を再度結んだといっていい。
「・・・・どうぞ。お酒は好きですか?飲むとよく眠れます・・」
自分がそうなのだろう。薄めずにグイっとバーボンをやるコノエ。
美智子も軽く頂くと彼女はコノエにとんでもない打診をする。
「私を・・逃がしてくれませんか?」
「弱い人だ。一杯で酔ったんですか?」
「違います。本気です」
「・・・無理ですよ」
優しいコノエの目が変わった。
「これはチャンスですよ。あなたは本来、銃殺刑などで命を失う身なのです。それがO氏は何ももたない
あなたに対し好待遇で抱え込みたいといっているのです。命の保障があるのですよ?」
もっともだ。
冷静に見て彼の方が正しい。が、美智子は急に寂しげな顔になる。
「抱え込まれ・・・また私は産業スパイとしてO氏の手となり色んな政治家たちと夜を共にするのですね・・・」
「それは・・・」
「構いません。それも私の゛業゛です。困らせてすみません。ただ1つ、教えて下さい・・・・あの・・・・・・」
聞きたい事は分かっていた。
コノエは責任者だが口止めされているのかもしれない。
バーボンを一気飲みしふうー・・と投げやりにしゃべる。
「たく!・・・・産業スパイというよりあなたのソレは゛素゛のままじゃないか(苦笑)!高官のお供え物じゃ
なければ私もあなたの誘惑にとっくに落ちてるでしょう・・・・・・黒奇島からエリート女医は・・・無事に脱出
しましたよ」
はっとし、やがてコノエの顔を見る美智子。
「・・・ただ・・その後本土にて捕まり・・・・・・殺されました」
「・・・・・・・・・・・・・」
「それだけしか・・・もうほんとに知らないんですよ」
「・・・・・そう・・」
緊張の糸が切れたのか美智子はうつろな目でそのまま倒れこんでしまう。
絶望的だ。
精液を採取した女医は殺されたという事は、美智子とヤスシの゛子供゛も・・・亡くなったという事だ。
何日も何日もベットで眠り衰弱していく美智子。
「この状態では連れていけない・・・」
コノエは焦らず回復を待ったがある時ベットから彼女はいなくなっていた。
付近を捜してもいない。
「自殺か・・・・・!?」
死体がしかし見当たらない。
しばらくして島の漁師が逃がした事が判明。
勿論報酬は○×△。
「そいつを捕らえてはかせますか?」
「いや・・・いらん。行き先はだいたい検討がつく。しかし・・・さすがは魔性の女、ピンクフォックスだな。
新体制となった今、昔のように囚人も島人もヘビーな裁き方を出来ない。迷ってる私の心の隙をついたんだ
・・・」
その頃、帝都、秘密の超高層ビルの一角。
夜になり、深紅のドレスに身を包んだ美貌のセレブ系貴婦人が黒塗りのリムジンから降りる。
勿論豪華に着飾った美智子、魔性の女PINKFOXの最後の゛賭け゛が今行われようとしていた。


                                                             23に続く