魔子物語6 Platonic Day

 

 

「勝美、ちぃとばかしやりすぎだよ。」

「どういう意味よ?」

「うむ・・・」

学園の理事長室で勝美は理事であり父でもある勝五郎と2人だけの会議を開いていた。

落ち着かないのか高い葉巻に火もつけず、代わりに青く晴れ渡った空を見つめつつ彼は話す。

「うちの女生徒・・もそうなんだが、この件は他校の生徒達でも物凄い噂になっててなぁ。

実は当学園の経済援助団体数社からその女生徒を退学させて欲しいとの申し出があったんじゃよ」

「・・・そうしないと経済援助を打ち切る・・・って事なの?」

「その通りじゃ。勝美よ、わが校は清純かつ清楚なお嬢様が通う、クリスチャンがイメ

―ジの学園なんだよ。それが世間様でダウンすれば当然新入生も激減、保護してくれる

企業も離れていってしまうんだ。このデカい学園はな」

と、理事は両腕を大きく広げて問うのだ。

「たっくさん!・・・の金がないと潰れてしまうんじゃ。当然お前の未来だってなくなる

。ワシは・・親バカかもしれんがお前が可愛いんじゃ。お前にだけはな」

「分かったわよ。様は五十嵐を退学させればいいんでしょ?簡単じゃん」

「・・・・・・・う、うむ。」

勝五郎はわが娘ながらなんだかガッカリした。

(簡単って・・・人の人生をなんだと思っているんだろうかなこの子は・・)

理事長室を出た勝美にもう後はない。

魔子は親友とクラスメイトを味方につけ、もはや先生もインサイド的な情事で失敗し

職を失うより真面目にしよう、と彼女の言う事を聞かないのだ。

だが魔子物語至上最大の悪人(笑)勝美はこれぐらいの事ではまいらない。

それどころか五十嵐魔子という自分がコクった男の子を取られた憎い女を追い出すと

いう、最高のメインエベントに向け彼女は精力的に動き始めた。

でも時間はない。

理事、勝五郎は明日の全校集会(放課後)で例の経済連数社と主だったスポンサーを読んであるのだ。

(いいか勝美。その集会最後にその子を退学にする、しないを決めるから皆さんをその気にさせる            

演出をし、決めろ。それしか・・・ないんじゃ)

「・・・ふん・・・最高の演出をしてやるよ。待ってな、五十嵐」

 

勝美は学園内のリムジンに乗り、消えた。

一方、魔子は久しぶりの学園生活をエンジョイしていた。

学校が、皆としゃべったりするのがこんなにも楽しいなんて―――――――――。

屋上へ駆け上がると青空に巨大な入道雲。

クルンッとスカートをなびかせるとそこには親友の樹里が男の子っぽく魔子を見つめていた。

「樹里ちゃん、気持ちいいね!」

「っとに!なんだかなー、昨日素っ裸で泣いてた奴かあ!?ほんとに(笑)」

栗色の髪が初夏の風邪になびくと洗いたてのシャンプーの匂いが樹里の鼻を甘くかすめる。

ブラウスもネクタイにも、流行のカラーマニキュアにも遊びのない魔子を保護者のように

見つめながら彼女は話をふった。

「魔子。あのさあ、・・・・心配してたよ、俊一。」

「・・・・・・・・・・そう。」

はしゃいでたはずの魔子は遠い目をし、言う。

もともと魔子はしゃべらない型で沈黙に耐えられない樹里は更に話す。

「魔子。どうなのよ。アイツさあマジ魔子にホレてるよ。噂だって聞いてるってさ。その・・・アンタに

こんな事いうのもアレだけど奴もさエッチ野郎だよ(笑)。

でもさ、なんでしばらく魔子に会わなかったと思う?゛本当に好きな女の裸は恥ずかしくて

見れない゛だってさ!!よく見るとさ、似てるよねアイツ。魔子にさ」           

めずらしく魔子は瞳も動かさずに黙って聞き終わるとしばしの沈黙の後、プッと吹き出してしまった。


「可笑しい?」

「だってだってぇ、・・うん、可愛いんだもん。すっごく・・ねえ、樹里・・・・」

「ん?」

「私・・・好きなの。好きで好きでしょうがないのよ。その・・夜が怖いの・・」

「なんでよ・・・」

「・・体がとても熱くなって・・・俊一君の事が・・・とて・・も・・・ああっ、どうしたらいいの」

「魔子・・・好きなんでしょう?」

「うん・・・」

「それは素敵な事だよ。それに普通だよ。好きな人を思うあまりにやっちゃったとか出ちゃった?             

いいじゃない!愛するからだよ。愛がなきゃあ出来ないんだよ」

「でもあたし・・・汚れちゃった・・・」

「魔子・・・・・・・」

 

 

放課後―――――――――――。

帰ってきた勝美は樹里たちがいない隙をつき、魔子に最後の引導を渡した。

「顔色いいじゃん、五十嵐。あんた心の中で゛ざま見ろ゛って思ってるだろ」

「そんな・・・」

「理事長直々の申し出よ。明日の全校集会で学園はアンタを退学処分にするか否かの判決を下すのよ」

「ええっ、そ、そんな」

「ククッ、司会とセッティングは私がやるから。そのテストでアンタが白、つまりクリスチャンの当校に

絶対必要な子だと判断した場合は五十嵐あんたの勝ちよ。でも・・・・分かってるよねぇ。                

負ければ退学!!屈辱的な噂と伝説をたっぷりしょい込んで出て行くのよん」

言うだけいうと勝美はサッサと校舎へ消えていった。

(学園を退学?・・・そ、そんな。私はどうしたら。お母さんは・・・)

せまりくる運命の時を前に小さな少女は何を考えたのか・・・

果たして彼女は退学か?そして俊一との恋の行方はいったい・・

 

第6話・完 次へ