かなり昔、だいぶ昔、中世のヨーロッパ地方は東西南北に巨大な国家もなく、非常に小さな国々が城を領地を治めていた時代。
いわゆる戦乱の時代である。
十字軍、テンプル騎士団など史上名高い騎士達の中、歴史の闇に消された国々や騎士も確実に存在した。
この物語の主人公もそんな小さな国の騎士の家として生まれ若干５才の時に彼女は戦士した父の後を
継ぎ騎士になり、わずか１６才で祖国フリート騎士団の団長になった。
小さな国だ。
わずか６千人ほどの小国家で軍隊も千人ほどだがただ１つ、この若い少女騎士の名だけは誰もが知っていた。
その少女は隣国に恐れられた剣の名手で１００対１でも負けないと称されたフリート王国の至宝であった。
名は、蘇芳（すおう）エナ、といい東洋の血の混じった美しい赤毛の髪の美少女であった。
身長１５７㎝ 体重４９ｋ Ｂ８０ Ｗ５６ Ｈ８５
という、騎士としては決して大きくない体だが非凡な格闘センスとスピードで今まで倒した騎士の数は一万人といわれる国の象徴であった。
性格はふだんは凄く大人しく、こんな荒々しい世界にいても異性とほとんど口を聞けない子だがいざ戦場に赴くと
どの剛の者よりも怒号を発し自ら先頭に立って剣をふり、味方を勝利へと導く、正に゛若き女神゛で、かといって人は
彼女の事を女神とはいわず愛情をこめて゛エナ様゛といった。
人と接する事が苦手であまりしゃべれないが根は悪い子ではなく、特に子供たちや子犬などとたわむれている姿などは誰から見ても愛らしい。
しかし話がかみあわない時もあったりで、完璧さがないので゛エナ様゛なのであろう。
あいさつもできない困った女の子だが剣をふりかざして自慢する風もなく、逆に秩序を乱す輩に対しては普段の大人
しさからは想像もつかぬ程の怒号で相手を正し、お年寄りにも優しい。
弱点はあるが皆から愛される騎士、それが蘇芳エナであった。
美しいのもあるのであろう。
神のいたずらか地味だがよく見ると綺麗なタイプで人によっては「普通じゃん」とも言われるが人によっては「彼女
しかみえない」と思われる容姿をこの゛小さな剣聖゛は持っていた。
人を選ぶタイプの美人。
しかし剣同様それを自慢するでもなく、戦場にでれば男達に混じって寝泊りし同じものを食べたり飲んだりしたからは
じめは階級が上の彼女に遠慮していた男達もしゃべりだすと意外と人なつっこい彼女と接し、筆頭騎士なのにどこか
守ってあげなければ、と思わせるエナに心から心酔していった。
男達が口につけた物でも彼女は抵抗するでもなく食べ、なければ１つの毛布で男たちとくるまって寝たりもした。
ヤギの肉など歯形の後などついていても照れながら食べ、毛布に入る時は相手の顔をジー・・と見つめ入っていった。
５０代の男などには寝ぼけて抱きしめたまま熟睡し、朝、気がついてびっくりする彼女がいたり・・・
計算なの・・か？
と勘ぐる者もいた。
本当はフリート王国の筆頭騎士なのだ。
規律をまとめる為に自らが私生活を共にし、その姿を見せてまとめていくつもりなのか・・と。
しかし彼女はド天然であった。
あるがままを受け入れ、恥ずかしいなら顔を赤くし、なければそれですます。
は、恥ずかしい・・・
とやたらテレ屋で引っ込み思案な点をのぞけばさっぱりした超ド級の天然であったのだ。
たださすがに着替えは一緒にはしなかったが、何故か５０才以上の男達の前では平気で着替えをしていた。
まあ、エナにとっては゛お父さん゛のようであり、恥ずかしくなかったのかもだが・・・
スタイルは抜群にいい。
剣の修行で鍛えまくっている為当たりまえだが恋愛感情を抱く若い騎士や兵士達も多かったがエナの恋人はもっぱら剣で、相棒の゛スオウ゛を片時も離す事はなかった。
そんな彼女の率いる軍団は全戦全勝で国は潤い、愛馬゛ミント゛と凱旋する彼女の周りはいつも人々の笑顔であふれ、幸せに満ちていた。
だが、良い事だらけではない。
勝ったとはいえ戦をやる以上必ず敵にも、そして味方にも死者が出るのだ。
今回も長年戦いを共にした盟友の１人が死んだ。
王との祝いの宴もそこそこに彼女は死んだ騎士達への墓参りにいくと、気がついた騎士達が「エナ様と共に・・」と
ぞろぞろついてくる。
酔っ払っている者もいたがそれを諌めず「さ、寂しいのでしょう・・」と一緒に死者の冥福を祈った。
ちなみにエナは緊張すると言葉がつまるのだが、その完璧でないところがフリート王国の騎士たちにとって
゛愛すべきお方゛
なのだろう。
しかし彼女はある意味やりすぎたのかも知れない。
フリートの国に緊張が走った。
隣国のアッサム共和国、ソーセージー王国、カラスミ国らが連合国軍を結成しフリート王国の国境まで侵入していた
のだ。
その数、１０万。
フリート王国は３０００足らずしかいない。
理由は明確であった。
アッサム、カラスミなどのフリートと同等クラスの国が巨大軍事国家のソーセージーに共闘を願い出たのだ。
その、真の目的はフリートの水田開発技術でもなく軍隊でもなく、不世出の剣聖として無類の強さを誇ったエナ１人を倒したいが為だけであった。
戦乙女・蘇芳エナ物語２に続く