戦乙女 蘇芳エナ物語 2




事実、エナは国外ではフリートの最強騎士として暴れまわり隣国の間では゛化け物゛だの゛蛇女神゛だの言われ
続ける悪人扱いで沢山の人々を殺してきたのだ。
国王は迷った。
いくら彼女が強くとも多勢に無勢、かといって和議に応じるのかどうか・・・


国は・・・滅ぶのか?・・く


決して経済的に豊かではないがフリートは広大なトウモロコシ畑と水車を持ち、田舎だが人々は暖かい。
国王は迷った。
そこへ急報を聞きつけた筆頭騎士、エナはためらわず、言う。

「・・・・私にめ、明暗があります。私1人でソ、ソーセージーへいかせて下さい!」
(・・・あいかわらず嘘が下手な奴じゃな・・)

緊張で言葉につまる彼女の心中を王は分かっていた。
エナは1人でいき、自らの命と引き換えにこの戦いを終わらせようとしているのだ。
国王は知っている。
幼き日から側に仕え、誰よりもひたむきに剣の修行をし、不器用だがこの国を誰よりも愛してやまないこの少女
騎士の熱い魂を。
(馬鹿なやつじゃ・・・)
と思う反面、
(なんて可愛いやつなのか・・・)
と感慨深く思い、エナのひたむきな目線に耐えられなくなった王はクル・・と背をむけ消沈した。


この国を救う手段が・・・・ない


彼にとってこれほど悲しい決断はなかったであろう。
まずしくともこの国にはエナを筆頭に皆が自らを犠牲にし国を思う心があったし民もまずしかったが笑顔があり心が
あった。


それを今、壊す・・・・

これが、わしの・・・・・・許せ、エナ・・・・



エナの命と国民の命・・・
無言の中、結局王は苦渋の決断のすえ、エナをソーセージに向かわせたが、最後までその後ろ姿が振り向く事は
なかった。
涙で顔を見せられないからだった。
だが、目立つ彼女の行動を察し、1人が2人、4人と騎士や兵士達は増え、城を出るまでその数は千人程にまでなっ
ていた。
嬉しかった。


「聞きましたゼッ!!水くさいっスよ俺達もついて行きますゼッ、エナ様っ!!!」
「ソーセージのクソ兵にキャンキャンほえ面かかせてくれるわっ!!」
「死ぬときゃやっぱ一緒っしょ、剣聖」
「ザワザワ」



だが、心を鬼にし彼女は城の門で皆に言う。

「・・・・・・め、命令します。皆はこの国を守り、人を、子供たちを支えて下さい。この後、フリートは戦のない、平和の国として変貌し、隣国とな、仲良く生きていくのですよ!!」

残念だがエナに言葉のセンスはない。
小学生の作文棒読みレベルの言葉だか誰もが真剣に聞き、涙しながらも彼女を見送る他なかった。
それでもついてこようとする者にはエナは剣で威嚇し、ついに彼女は単身、大国ソーセージーへ乗り込んだ。


                                                                  
                                                                  

                            戦乙女・蘇芳エナ物語3に続く