体罰学園特別編  転校生Aの悲劇・・・ 2


「・・ああ、天才少女の事ね。」

同じクラスで親しくなった子から仕入れた情報はショックを隠せないものばかりだった。
ワイワイガヤガヤと授業が始まる前の教室はいつも市場ばりに騒がしい。
熱美は迷っていた。
昨日も・・・よく眠れていなく、アクビをしながらはぁ・・とため息混じりに窓の外を眺める。
学生、教師、どこにでもある高校となんら変わらない。
ただ、異常なまでの厳しい体罰を除けば・・・であるが・・・

山本香織、天才少女、勉強が良くでき権力者大ゴボウ先生のお気に入りだった女生徒だったが厳しい体罰に逆らい教師たちから体罰という名の拷問(お仕置き)を受けている

「馬鹿な子よ。クスクス・・」

そういうとその子は熱美を下から見、両手を後ろにやりながら別の友達のところへいってしまった。
眠る前もあの、香織のやつれた顔と傷ついた裸体が脳裏に焼きつき離れなかった。

今日は・・あの子は登校してきてるのかな・・・

分かっていた。
いや、ここにいる誰もがきっとそうであるように彼女もまた興味本位で天才少女香織を見、自らがあの場に立つ
事を恐れて無意識のうちに逃げ場を探していたのだ。
可愛そう以前に我が身を大事なのがずるいかも知れないが普通の人が考える最善の策なのである。
彼女は思う。
(あの子、好きな人いるのかな・・・)
もし自分が体罰にあい、暴力はともかく裸・・・にされたらとてもとても・・泣き叫び学園には来れず不登校のまま
いずれ退学の道を歩むだろう。
そしてその傷はそう、きっと一生消えはしない。
誰を愛し誰と結婚しても女として本当に癒される日々は絶対、きっと、訪れはしないであろう。
だが、次の瞬間熱美は凍った。
のぞいた窓の下、昨日の天才少女が学生服を着てなんと普通に登校してきているのだ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

おーーっ、山本だぜぇ、これで体罰3日目なのに・・よく来れるよな

ほんとは変態なんちゃうか?沢山の人に見られてマ○コとかウズウズすんだぜきっと♪

先生に謝ればいいのに。空気読めない子!!

ヒソヒソ・・・・

窓を乗り出しながら男子生徒たちははしゃぐ。
(・・・もう、いや・・・・・・)
熱美は顔を赤くし頭を抱えて下を向く。
聞けば彼女だけでなく週に一回、下着チェックが全校であったり下着だけの姿にされ立たされたり、校内一周したり
の罰くらいは学園全体で毎年20人くらいは受けているというではないか。
(そ、それだって)
おかしい。
ようは皆、適度に神経がマヒしているのだ。
゛羞恥心゛という名の神経が・・と熱美は思い、軽くため息をまたついた。

やっぱし私、耐えられないよ・・決めた!
残念だけど退学し栄子お勧めのゆるい信心高へ行こう。あそこなら友達もいるし不安メーター0。そうしよう・・・

彼女は行動が早い。
ガタッ、と机を立ち皆が騒ぐ中逆方向を歩きだす。
今日これから自宅に戻り母に事情を説明し手続きすればもう学園とサヨナラできるのだ。

こんな悪夢のような学校はーーー

(二度と見たくない・・・!!)
心でつふやく熱美。
しかし香織を中傷するヒソヒソ話の一言が熱美の強い決意をにぶらせた。


小栗先生と山本香織ができてるって・・・ほんと?


キーンコーンカーンコーン♪
放課後、熱美は思いきって職員室のドアを叩いた。
開けると乱雑な机、書類の山に沢山の教師たち・・・そしてその中に見慣れた彼の後ろ姿はあった。
「オグリサマ・・・・」
敦美は頬を赤くし恋する女の子の顔になる・・・中学の時に実習生として来ていた当時そのままの小栗順の姿・・・
不器用だった熱美は他の女子と一緒に騒ぐ事で゛一目惚れ゛したのを隠し、やがて任期が来て小栗は彼女の学校
を去ったのだ。

勇気をだして、き、聞かないと・・・

いや、その前に私、熱美を覚えていてくれるかな・・そんな妄想をしながら踏み出した彼女の右足がピタ、と止まる。

「山本香織を・・離して下さい」

「・・嫌だといったら?」

「力づくで助けます。彼女は僕と同じ志を持つ大事な・・大事な・・生徒ですから!!」

(・・・・・・・・・・・・)

一瞬、小栗は熱美と目が会い、ア・・と感心を示した。
きっと覚えてくれていたのだろう。
しかし熱美は顔を手にやり後ずさりしいたたまれず教室を駆け足で抜け出した。

う、うう・・・・・・

向かった先には昨日と同じ場所で吊るされる裸の香織。
教師も中傷に飽きた生徒たちも誰もいないそこで天才少女と対峙する熱美。
ケツ、胸、腹、もも・・・昨日よりも更に増えている傷。
うなだれた顔からだらしなく床にツー、と垂れ落ちるヨダレ。

・・・・・・・・・・・

何かを言いたかったが熱美は結局言いかけたのをやめその場をゆっりと去る。
行き交う生徒たち。
また始まりだした中傷の嵐の中立ち止まり、熱美は何か答えを探るようにもう一度だけ振り返り罵倒される香織の姿を 見つめ玄関を後にした。



                                                            
体罰学園特別編・転校生Aの悲劇3に続く