体罰学園特別編  転校生Aの悲劇・・・ 4


「えー・・であるからして・・・となるわけだ」

ある日の午後、いつも以上に緊張感ただよう教室で国語の授業はおこなわれていた。
体罰学園とはいえ全ての教師が鬼や修羅ではなくいたって普通の教師だっている。
そんな時の授業は意外としゃべり声も聞こえるのだが・・・シャーペンをくちびるにあてて熱美はジー・・とこの大柄な
教師を見つめる。

この人が例の・・学園最狂の鬼教師、大コボウ金平先生かぁ・・・

香織に体罰をしていた外村もひどかったが悪のオーラが明らかに違う。
ヤンチャな男子たちも生つばを飲み蛇に睨まれたカエルのように大ゴボウの授業に聞き入っていた。
と、その時史上最悪の事態が教室に巻き起こる。


チャラリラリーン♪ チャラリラリーン♪


携帯のメール着信音だ。
黒板の大ゴボウのチョークの書く音が止まり低い声で生徒たちに言う。


誰かね・・携帯をあれ程持ってくるなと言っておいたのに持ってきたのは


シーン・・となる教室。
更にたずねる大ゴボウ。


ほーう、この私にシカトですか。名乗り出ないのなら連帯責任です。皆、下着姿で校庭一周、いいですか?
今なら許します。勇気を持って名乗りでなさい。



誰なのよ・・・


熱美もただ事ではない。
なんせ下着姿にはなりたくない・・・それは他の生徒たちも同じで皆ザワザワし始めた・・・がその時いたたまれなく
なったのであろう。

「・・・あ、あの・・・私で・・す。すいませんでした・・」

ガタ・・と立ち上がり名乗りを上げたのはなんと熱美が友達になったばかりのユッコだった。
シーンとなる教室の中、大ゴボウは彼女を見つめつぶやく。

「・・・よく名乗ってくれました。許しましょう。進藤ユッコさん、後で職員室へ来てください」

授業が終わり楽しいはずの休み時間に皆、シーンとなったまま考え込んでいる。
熱美はよく分からなかった。
ユッコは許されたのだ。
なのに皆、なんで・・・
「佐藤さんは知らないから・・・可愛そうだけどユッコ、もうダメよきっと・・・」
女子の4、5人が固まり席を立つユッコに握手を求める。
男子は遠くから

「・・強く生きろよ。なっ!」

泣きそうになりながらユッコはふと最後に仲良くなった熱美の顔を見る。

ユッコちゃん・・・

「・・・私もせめて・・一緒にいかせて」

彼女の手を取り職員室に熱海もむかう。
にぶい熱美もようやく気づく。
大ゴボウは許すといったが多分、そう、結局あの天才美少女のようにこの子も人前で体罰という名の屈辱を教師
たちから受けまくり裸にされ最後は・・・

なんていう学園なのここは・・

恐らくDATAにはないだけで実際に退学していった生徒はもっと多いのだろう。
何にしても熱美は胸いっぱいの寂しさでいっぱいだった。
この異常な学園ではじめて出来た友達が汚されまくってきっと消えていくのだ。
早ければ今日、晒し者にされ明日からはきっとユッコは休学しやがて退学するのだろう。

ごめんユッコあたし、あたし・・・闘えないよ・・う

大学がある。
ほどほどの企業でOLでもしてやがて好きな人と結婚して幸せな家庭を築く・・・
熱美は普通の家の子。
パパもママも普通に生き平凡だが熱美をとても愛してくれている。
熱美はそんな両親が大好きだ。
ドラマチックなんてなくていい。
ただ、ただ普通に平凡な毎日があればそれでいいのだ。

震え下を向くユッコの代わりに職員室のドアを開けた彼女。


「失礼しま・・・え?・・・・・・・・」


直視したその先にあったもの・・・それは彼女の王子様、新任教師小栗順が素っ裸で外村たちに摂関されている
ショックな現場であった。

逆光に照らされる長身の均整の取れた綺麗な肢体、割れた腹筋、締まった大腿にスラッと伸びた長い足、そして
その真ん中にある大きなソレは熱美が見たはじめての男子の生殖機能棒であった。
しかし腹はアザで染まり足も胸も赤く腫れ上がりその端正な顔の頬はふくれ右目のまぶたは殴られまくって
コブになっていた。
それでも彼は耐え、両手を両腿につけて立っていた。


・・・・・・・・・・・う


ドクン ドクン ドクン


気絶しそうだった。
やっぱり、やっぱり熱美は小栗が好きなのだ。
好きな人の裸・・・全て見たい・・・だがこんな形でボロボロに汚された王子様なんて絶対、絶対見たくなかった。
優しかった小栗・・・だが今彼は他の女性教師たちもいる前で理不尽にもスッポンポンに晒され生き恥をかかされて
いる。
何かしゃべろうとしてもショックでしゃべれず両手を口にやろうとする熱美を見つけ小栗は言う。


「・・・部外者は入ってはいけません。用事はなんですか?」


辛く残酷なシーンだ。
人生には幾度もとんでもない場面があるものだが彼女にとって今、死よりも辛いまなざしに違いない。
用件よりも何よりも彼女は傷ついた小栗の身体の方が心配なのだ。
震える指先。
噛みあわない唇。
動けなかった。
緊張で喉も渇いて声も出ない。
忘れた。
ユッコの事。
全て消えた・・・彼女がやった最初で最後の一言はこれであった。



「・・・オ、オグリサマをいじめないで・・・」



その後は覚えていない。
ただ気がついたら保健室のベットに寝かされていた。

「あらあらお姫様のおめざめかしら・・・ね」

空を見るとどこまでも雲ひとつない明るい日差しが彼女を優しく照らしていた。
翌日、ユッコはもういなかった。
聞けば放課後裸にされ散々摂関された挙句見世物のように吊るされ沢山の生徒たちがまだ幼いユッコのチェリー
ボディーを冷やかしながら見つめていたという。

「そう・・」

小栗のその後・・・は分からない。
裸にされ皆の晒し者にされたのかそれとも裏だけで表ではまだ教師なのか・・・ただ1つ確かなのは天才少女
山本香織がまだ学園に通い続けているという事実だけであった。



                                                             
体罰学園特別編・転校生Aの悲劇5に続く